2021/7/27(火)
岡山県出身の名文筆家内田百閒の生誕百年を記念して発足したこの文学賞は、岡山をこよなく愛した百閒にちなみ「岡山にゆかりのある文学作品」を広く全国に向けて募集します。
「なぜ僕が、岡山に帰らぬかとおっしゃるけど、それは帰るわけにはいかないんだ。僕は岡山が、大切で大切でしょうがないのです。・・・新しい岡山を見るのもいいが、見たとたんに古い故郷がなくなってしまうから。」
内田百閒 対談「歯は無用の長物」昭和41年1月より
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第十六回 岡山県「内田百閒文学賞」募集要項 | |
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作品のジャンル | 随筆及び短編小説(評伝・紀行文・戯曲を含む) ※岡山が舞台となるものや、岡山県出身の人物・自然・文化・風土・物産などを題材とした作品。 |
応募規定 | ●日本語で書かれた未発表で筆者自身のオリジナルな作品 (他への二重送稿は不可。同人誌に発表した作品は可とするが、原稿料、賞金を受けているものや、営利目的の場合は不可) ●文献や資料などを引用または参考にした場合は、その出典を必ず明記。 ●原稿は横長A4サイズのみ。 ●縦書き400字詰め原稿用紙50枚以内。 1.ワープロ原稿の場合は、A4サイズ横長を用い、縦書きで1ページ20字×20行で印字、文字サイズは14ポイント程度で印字。原稿用紙型のマス目等の使用は不可。 ワープロ原稿の雛形 WORD圧縮ファイルをZIPダウンロード 2.手書き原稿の場合はA4サイズ縦書きの400字詰め原稿用紙を使用。鉛筆書きは不可。 ●本文には通し番号(ページ数)を入れる。 表紙の記入例を参照。←CLICK |
応募資格 | 年齢・国籍などを問わずどなたでも応募できます。 |
応募締切 | 令和4(2022)年5月31日(火) 当日消印有効 |
最終審査員 |
小川 洋子/ 平松 洋子 / 松浦 寿輝(50音順) |
賞 | 最優秀賞 岡山県知事賞(1編)…賞金100万円 優 秀 賞 岡山県郷土文化財団理事長賞(2編)…賞金20万円(1編につき) |
発表 | 令和4(2022)年12月に、受賞者に直接通知します。 |
出版 | 最優秀賞及び優秀賞作品は、(公財)岡山県郷土文化財団から刊行する予定です。 |
その他 | ●受賞作品の著作権、出版権は(公財)岡山県郷土文化財団に帰属します。 ●応募作品は返却しませんので、必要な方はコピーを保存してください。 ●作品の審査、選考についての問い合わせには応じられません。 ●事前選考(一次~二次)通過作品の題名、氏名(ペンネーム)を岡山県郷土文化財団ホームページで発表する予定です。 ●応募受付は郵送または持参 注:メールでの受付は行っておりません。 |
主催 | 岡山県、公益財団法人岡山県郷土文化財団 |
協力 | 株式会社ベネッセホールディングス 公益財団法人吉備路文学館 |
後援 | 岡山県教育委員会、岡山県図書館協会、公益社団法人岡山県文化連盟、公益財団法人福武教育文化振興財団、山陽新聞社、朝日新聞岡山総局、毎日新聞岡山支局、読売新聞岡山支局、産経新聞岡山支局、中国新聞備後本社、NHK岡山放送局、RSK山陽放送、OHK岡山放送、TSCテレビせとうち、RNC西日本放送、KSB瀬戸内海放送 |
応募先・ 問い合わせ先 |
〒700-0822 岡山市北区表町1-7-15 702号 (公財)岡山県郷土文化財団事務局 TEL 086-233-2505 |
※アンケートにご協力をお願いします。今後の文学賞運営の参考にさせていただきます。 アンケート用紙ダウンロード
(50音順 敬称略)
小川 洋子(おがわ・ようこ)/作家
1962年生まれ。岡山県岡山市出身。
「妊娠カレンダー」で芥川賞受賞。「揚羽蝶が壊れる時」で海燕新人文学賞受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞、本屋大賞受賞。『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞受賞。『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞受賞。『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。『小箱』で野間文芸賞受賞。『密やかな結晶』『猫を抱いて象と泳ぐ』『原稿零枚日記』『人質の朗読会』『洋子さんの本棚』(共著)『琥珀のまたたき』『不時着する流星たち』『口笛の上手な白雪姫』『約束された移動』『そこに工場があるかぎり』など著書多数。
平松 洋子(ひらまつ・ようこ)/作家・エッセイスト
1958年生まれ。岡山県倉敷市出身。
『買えない味』でBunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。『野蛮な読書』で講談社エッセイ賞受賞。『とっておきの韓国・朝鮮料理』『アジアの美味しい道具たち』『平松洋子の台所』『おとなの味』『なつかしいひと』『小鳥来る日』『ひさしぶりの海苔弁』『本の花』『洋子さんの本棚』(共著)『食べる私』『彼女の家出』『日本のすごい味 おいしさは進化する』『日本のすごい味 土地の記憶を食べる』『忘れられない味「食べる」をめぐる27篇』『肉とすっぽん 日本ソウルミート紀行』など著書多数。
松浦 寿輝(まつうら・ひさき)/作家・詩人
1954年生まれ。東京都出身。
『花腐し』で芥川賞受賞。『冬の本 松浦寿輝詩集』で高見順賞受賞。『エッフェル塔試論』で吉田秀和賞受賞。『折口信夫論』で三島由紀夫賞受賞。『知の庭園―19世紀パリの空間装置』で芸術選奨文部大臣賞受賞。『あやめ 鰈 ひかがみ』で木山捷平文学賞受賞。『半島』で読売文学賞受賞。『吃水都市』で萩原朔太郎賞受賞。『afterward』で鮎川信夫賞受賞。『明治の表象空間』で毎日芸術賞特別賞受賞。『名誉と恍惚』で谷崎潤一郎賞、Bunkamuraドゥマゴ文学賞受賞。『人外』で野間文芸賞受賞。日本芸術院賞受賞。他著書多数。
2021年7月現在
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2021/5/12(水)
岡山県と岡山県郷土文化財団の共催で募集した第十五回岡山県「内田百閒文学賞」受賞者の表彰式と座談会を4月27日(火)、岡山県立美術館ホールで開催しました。新型コロナウイルスが猛威を振るう中での開催となりましたが、感染症対策を徹底し行いました。
表彰式では、受賞者3名に、賞状や記念品が渡され、最終審査員の小川洋子先生、平松洋子先生、松浦寿輝先生から講評をしていただきました。
座談会では、新型コロナウイルスの影響でご欠席だった松浦寿輝先生からのビデオメッセージ、優秀賞の馬場友紀様のコメントを紹介した後、作品の舞台となった土地のことや家族の話など、作品にまつわるエピソードなどが語られました。
新型コロナウイルス感染症で混沌とした現在の世の中ですが、15回の節目にふさわしい“文学の力”を感じる会となりました。
2021/3/25(木)
岡山県と岡山県郷土文化財団の共催で、岡山にゆかりのある文学作品を募集していた第十五回岡山県「内田百閒文学賞」の受賞作品が次のとおり決定しました。
令和2年11月27日(金)の最終審査会では、応募作品396編の中から第1次、第2次審査を経た10編について、最終審査員の小川洋子氏、平松洋子氏、松浦寿輝氏による厳正な審査が行われました。
令和3年4月27日(火)に、岡山市内において表彰式を開催、入賞作品は、令和3年3月中に(株)作品社から出版予定です。
なお、表彰式は新型コロナウイルス感染拡大の状況によっては変更する場合もあります。
小説『たまゆら湾 (たまゆらわん)』
(ペンネーム:江口ちかる(えぐちちかる) 59歳・女性)京都府在住
(作品の概要)
シニア向け文学賞にKが応募した小説『たまゆら湾』は、昭和30年代後半の耐火煉瓦工場が建ち並ぶ岡山県備前市三石を舞台に、少年、明が古本屋「たまゆら堂」の店主、美耶子に寄せた恋心が描かれていた。“両側から山にじわじわと締めつけられている町”で、屈折した思いを抱えている明は、美耶子と一緒にいる時間が心のよりどころとなる。だがある日、美耶子は町から姿を消した。小説の中で明は、美耶子と不本意な別れをし、彼女の幸せを願う。
そんな中、小説『たまゆら湾』に登場する店主は母がモデルではないかという手紙が届く。
(審査員講評)
小説がもつ虚構性を物語の装置として生かすことによって、文学作品としての試みを成功させている。「K」によって小説中に描かれた少年・明が、そののち老齢の実在の人物として現れる流れも巧みで、作者の力量を感じる。
○優秀賞
小説『岡山駅から (おかやまえきから)』
(本名:松本 利江(まつもととしえ) 56歳・女性) 兵庫県在住
(作品の概要)
岡山市内に住むチエと奥備中に住む従兄弟の昭夫と英夫は、お互いの家を行き来し、楽しい時間を過ごしていた。3人にとって岡山駅はいつも楽しみの入り口であった。しかし、昭和20年、英夫が「満蒙開拓青少年義勇兵」として15歳で満州に渡ることになる。チエは、岡山駅に見送りに行き、晴れ着の切れ端で作った御守袋を英夫に渡した。岡山駅は悲しみが詰まった建物に変わってしまっていた。
終戦から1年が過ぎた時、満蒙開拓青少年義勇兵の一員として満州に渡った仲間の少年がチエが作った御守袋を手に訪ねてきた。
(審査員講評)
「満蒙開拓青少年義勇兵」として終戦の三カ月前に戦地に赴き、そのまま没した青年の運命を物語の主軸として、「岡山駅」という場所にまつわる記憶を厚みのある歳月の重さとして浮かび上がらせている佳篇である。
○優秀賞
小説『 糸 (いと) 』
(本名:馬場 友紀(ばばゆき) 48歳・女性) 東京都在住
(作品の概要)
昭和19年、信子は倉敷の軍需工場で働いていた。「産めよ殖やせよ」の時代、20代半ばの信子は、「嫁き遅れ」と言われ肩身の狭い日々を送っていた。ある日、仲人さんが縁談話を持ってきた。気が進まない信子だが、写真を見て何処かで会ったことがある気がする。しかし、外地で長男を亡くした母は、外地に行く予定のその男性との縁談を断ってしまう。その夜、以前に駅で会った男性だと思い出し、赤い糸でつながっているかもしれないと胸が高鳴った。
そんな中、岡山大空襲で被災した伯母の一家が同居することになり、琴の貸し借りをめぐってちょっとしたわだかまりを持つ。戦争最末期に青春を送った女性たちの生き様が描かれている。
(審査員講評)
赤い糸で結ばれた誰かを待つ女性が、軍需工場で糸を裁断する仕事に従事する。戦争の悲惨さを忘れさせるこの独特のユーモアが、魅力的な小説。銃後の暮らしの中で、女性たちの抱く細やかな心情が生き生きと伝わってくる。
(注)優秀賞は受付順です。
出版された文学賞受賞作品の一覧は刊行物紹介をご覧ください。←CLICK